Jリーグとのタッグで加速!「三方良し」の地域循環モデル スポーツの力を活かしたカーボン・オフセットへの挑戦
2026年04月01日
2025年7月、三菱HCキャピタルは「Jリーグ気候アクションパートナー」契約を締結し、Jリーグ・Jクラブと共に気候変動対策を推進していくことを発表しました。なぜJリーグとのパートナーシップを選び、どのように地域への収益還元を実現しているのか。プロジェクトを牽引するセクター営業本部の髙山巌と井上繁雄が、その背景と具体的なスキーム、そして地域社会に根付いた取り組みへの熱い思いを語ります。

髙山 巌(画像右):セクター営業本部 日立グループ営業部
1998年入社後、中堅中小企業~大手製造業のリース営業をはじめ、風力発電事業や省エネなど環境エネルギー事業に従事。2013年より、新規事業や地域創生を担当、スポーツを核としたスタジアム・アリーナ整備でまちづくり事業を推進。2022年4月より現職、カーボン・オフセット付PC-LCM(※)拡販を推進中。
- ※カーボン・オフセット付PC‑LCMとは、PCの製造から廃棄までに発生するCO2を、信頼性の高いJ-クレジットの購入・無効化により相殺するサービス。
井上 繁雄(画像左):セクター営業本部 日立第一営業部 営業課 兼務 三菱HCキャピタルITパートナーズ(以降、ITP)第三営業部。
1994年の入社後は、レンタル営業畑を歩みPC-LCMの立ち上げに深く関わる。2018年4月より関西地区の公共営業・ヘルスケア営業に従事、自治体・病院などと連携し地域社会の課題解決を推進。2024年7月よりITPとのレンタル事業統合に従事し、2025年4月より現職、カーボン・オフセット付PC-LCMを立ち上げ、推進している。
社会連携への意識が高いJリーグとの取り組みで生まれる
「三方良し」
――初めに、本プロジェクトの概要を教えてください。
井上:Jリーグ気候アクションパートナーは、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(以下、Jリーグ)がJクラブと企業が協力し、サッカーを通じて気候変動対策を進める取り組みで、当社は2025年7月に参画しました。当社グループのPCリユース(再利用)サービスの活用を、Jクラブ(※)をハブとして地域のパートナー企業・自治体へ働きかけ、得られた収益の一部を当該地域の環境保全費用として還元する仕組みです。また、カーボン・オフセット付PCをJリーグやJクラブをハブとして地域のパートナー企業・自治体に導入してもらうことで、PCのCO2排出量をオフセットし、環境負荷の低減につなげ、サーキュラーエコノミーモデルを構築します。将来的には、JリーグやJクラブと連携し、地域由来のJ-クレジット創出事業を開発し、収益を地域に還元するとともに、Jクラブホームタウンのゼロカーボンの実現への貢献を図っていきます。
- ※Jリーグは「地域に根ざしたスポーツクラブ」を核とし、誰もが生涯にわたりスポーツを楽しめる環境を整備し、理念である「豊かなスポーツ文化の醸成」を実現することをめざしている。Jリーグはその理念に賛同するクラブ(Jクラブ)によって構成され、クラブ数は1993年の開幕当初10クラブから現在60クラブに拡大し、47都道府県中41都道府県に広がっている。
- ※J-クレジット制度は、CO2削減・吸収量を国が“クレジット”として認証する仕組み。企業はクレジットを購入することで、脱炭素やカーボン・オフセットに活用できる。
――PCリユースで得られる収益の一部がJクラブに還元され、環境保全活動に充てられるそうですが、このスキームの詳細は。
髙山:サービス収益の一部をJクラブへ還元する仕組みです。Jクラブをハブとして地域企業の不要なPCを買い取り再利用(リユース)することで、サーキュラーエコノミーモデルが形成され、さらにその収益が地域環境保全につながれば、企業からの理解が得られやすくなると考えました。当社、Jクラブ、そして地域企業・自治体の「三方良し」を実現し、持続的な支援を可能にいたしました。

――「カーボン・オフセット付PC-LCMサービス」の具体的な対象と、その証明方法を教えてください。
髙山: PCの製造から輸送・設置・使用、そして廃棄に至るまでの全工程で発生する CO2排出量(各メーカーが算出するカーボンフットプリント)に基づき、当社グループは国内で最も信頼性の高い J-クレジットを購入し、そのクレジットを無効化することで排出量を相殺(カーボン・オフセット)しています。

――Jリーグとタッグを組んだ背景と、その目的についてお聞かせください。
髙山:Jリーグは年間のCO2排出量削減目標を掲げ、「スポーツポジティブリーグ(SPL)※」にも参画しているほど気候アクションに力を入れている団体です。当社グループは以前から、PCのライフサイクルマネジメント(LCM)や、PCリユースによるサーキュラーエコノミーモデルを事業として推進してきました。この取り組みは、Jリーグが進める気候アクションパートナーの趣旨と合致すると確信し、我々から提案いたしました。アセットのリユースを通じて地域社会に貢献するモデルを構築できるのは、当社グループならではの強みであり、今回の提案はその実現を可能にしたものと自負しています。
- ※SPLは、国連環境計画(UNEP)と英NGOが主導するスポーツクラブ向けの環境アクション・評価フレームワーク。サッカークラブの気候アクションを数値化し、その進捗や方向性を把握できる仕組み。2025年現在、欧州の4つのプロサッカーリーグが参画しており、Jリーグは5番目。
井上:さらに、Jリーグが提言する「スポーツを通じた環境・地域密着型の社会連携」に対する意識の高さにも着目しました。Jリーグは全国に60のクラブチームがあり、それぞれが必ずホームタウンを持ち、地域に根付いた活動を展開しています。一企業が単独で動くよりも、地域社会への影響力が強いクラブをハブとして活動を行う方が、高い社会価値を生むと考えたのです。
製造から廃棄までオフセット。
年間で東京ドーム約129個分のCO2を削減
――すでに具体的な導入実績も挙がっているそうですが、プロジェクトの目標と現在の進捗状況は。
井上:本プロジェクトでは、年間18,000台のカーボン・オフセット付PCの提供を通じ、約5,400トンのCO2削減を目標としています。これは、樹齢40年の杉の木が吸収するCO2量に換算すると約612ヘクタール分の森林面積、すなわち東京ドーム約129個分に相当する規模です。
すでに関心を持たれ、打ち合わせを開始しているJクラブは10以上にのぼっています。現時点での実績としては、Jリーグの運営を担う職員の皆さまが使用するPCに、カーボン・オフセット付PCの採用が決定しています。また、本取り組みに賛同し、Jリーグを通じてお問い合わせをいただき、PC30台の導入ならびにPCリユースの検討を進めてくださっているクラブもあります。さらに、別のクラブからは「再生PCを導入したい」というご要望も寄せられるなど、関心の高さがうかがえます。Jクラブ側もこの活動の意義を理解し、それぞれのパートナー企業さまへ積極的にご紹介いただいております。
――Jリーグとの連携から生まれるメリットは。
髙山:やはり地域企業からの理解の得やすさが最大のメリットであると感じています。地域の誇りであるJクラブと一緒に取り組む活動であり、しかも収益が地域のために使われるとなると、新たな社会価値創造として、企業の経営層にもスムーズに理解していただけます。スポーツが持つ「共感」や「熱狂」の力は非常に大きいと実感しています。

「地元愛」が牽引する全社横断的な営業体制で、一体感を形成
――このプロジェクトは全社的な取り組みとのことですが、具体的な推進体制を教えてください。
井上:本プロジェクトにおいて、私と髙山はあくまで社内の調整役に過ぎず、実際に地域でJクラブや企業と連携を進めるのは、当社の全国各エリアの営業担当です。我々がJリーグさんからクラブをご紹介いただき、各地域の担当者につないで直接訪問してもらうという体制を取っています。
髙山:カーボン・オフセット付PC-LCMサービスの手配は三菱HCキャピタルITパートナーズ、PCリユースについてはMHC環境ソリューションズという当社のグループ会社が担って、グループ連携を密にしています。各エリアの営業部店やグループ会社を含めて一丸となって取り組んでおり、熱量の高さを感じています。
井上:地域のことは、その地域の担当者がクラブや自治体と連携して進めるのが最も効率的です。当社の営業担当は地元愛が強く、地域に貢献したいという思いを持つ者が多いことに加え、サッカー好きも多い。そのため、非常に前向きに営業活動ができており、会社全体で一つの商材に一体感を持って取り組める活動となっています。
髙山: 各エリアの部店の「地元を盛り上げたい」「クラブを応援したい」という熱い思いが、このプロジェクトの推進力となっていますね。
地域由来のクレジット創出へ。スポーツの力を借りた未来の展望
――将来的には「地産地消」による地域循環型スキームの構築をめざされているそうですね。
髙山: 最終的には、PCのカーボン・オフセットに地域由来のクレジットを活用し、地域循環型にしたいと考えています。
井上:全国にある60のJクラブと自治体が連携し、森林整備を行ってCO2吸収をクレジット化し、オフセットに利用する。あるいは海沿いの町にあるクラブでは、ワカメの藻場や干潟を増やすなど、ブルーカーボンと呼ばれる海洋保全活動を地域と一緒に作り上げ、循環させていく。こうした活動に地域の子どもたちが関わることで、学校の授業でPCを使う際にも、「このPCを動かす電力はクラブがオフセットしてくれている」と感謝の気持ちが生まれるかもしれません。それをきっかけにクラブを好きになり、熱心なサポーターになるといったファン化にもつなげたいと考えています。

――最後に、Jリーグ以外も含めた今後の展望をお聞かせください。
髙山:Jリーグに続き、今後は日本バドミントン協会など、Jリーグと同じように社会貢献活動に力を入れているほかのスポーツ団体との連携も広げていきたいと考えています。また、BリーグやVリーグなどホームタウン活動が積極的なスポーツ団体であれば、今回のモデルを応用し、スムーズに連携を加速させていけるでしょう。スポーツが持つ「共感」の力を借り、地域の課題解決と持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。

- ※本記事は2025年11月の取材内容に基づいています。
記載の部署・数値・取り組み内容は取材当時のものです。



