スタートアップとの協業で社会的課題に挑む 最先端ロボットが拓くインフラの未来
2026年04月01日
三菱HCキャピタルは、従来のリース・ファイナンス事業の枠を超え、テクノロジーを活用した社会的課題解決に本格的に乗り出しています。そのけん引役となっているのが、2024年4月に設立した「ロボティクス事業開発部」です。同部は社会的課題解決の一例として、最先端の配管点検・清掃ロボットを開発したスタートアップ企業、株式会社ソラリス(以下、「ソラリス社」)とタッグを組み、「サブスクリプション型点検サービス」を開始しました。このプロジェクトを担当する戸塚健が、本サービスの詳細と事業の将来性について語ります。

戸塚健:営業統括本部営業開発部 兼 ロボティクス事業開発部
2011年入社。営業部門を7年間担当した後、三菱UFJ銀行に出向し証券化・流動化等のストラクチャードファイナンス業務に従事。その後、営業開発部にて新規事業の開発・推進およびスタートアップ関連業務(投資、企画、業務推進)を担当。2024年からはロボティクス事業開発部を兼務し、ロボティクス領域における新規事業の開発・推進に加え、投資先バリューアップ業務等を担当。
ロボティクス事業開発部が挑む“社会的課題”の解決
――まず、ロボティクス事業開発部の設立の経緯についてお聞かせください。
戸塚: 私たちの部が新設された背景にあるのは、年々深刻化する社会的課題への危機感です。特に国内では、少子高齢化に伴う労働力不足が大きな課題となっており、その解決策として、さまざまな業界でロボット導入のニーズが急速に高まっています。当社は、長年にわたりグローバルで培ってきたアセット(資産)に関するノウハウと、幅広いパートナー企業とのネットワークから生まれる強固な顧客基盤を有し、それらにファイナンス機能を組み合わせた「コーディネート力」を強みとしています。この強みを最先端テクノロジーであるロボティクス分野に生かせると判断し、新規事業の開発・推進を加速するために当部が設立されました。
――今回のスタートアップ企業との協業プロジェクトは、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
戸塚:現在、社会では老朽化したインフラが原因となる事故やライフラインの寸断といった深刻な問題を引き起こす「インフラ老朽化問題」が社会的課題となっています。今後、多くの設備で修繕が必要になると予想され、低コスト・少人数で質の高いメンテナンスを実現できる技術が求められています。こうしたニーズを踏まえ、お客さまへのヒアリングや各種報道から、当社としてどのように貢献できるか検討を進めていたところ、ミミズ型管内走行ロボット「Sooha」を開発した中央大学発のスタートアップ企業であるソラリス社を当社のお客さまよりご紹介いただきました。当社は従来からリースや中古資産の売買を通じてさまざまな企業の設備運営に関わってきました。その中で、工場内の配管における詰まりや漏水、火災・爆発などのリスクに対応するソリューションの必要性を強く感じていました。特にプラントや工場をお持ちのお客さまからは、配管点検に高度な技術や多くの工程を必要とするため、リソース不足に悩まれているという声を数多くいただいていました。これらの課題に対し、ソラリス社の独自技術と、当社のファイナンスおよびサービス構築のノウハウを組み合わせることで、この課題を解決できると判断し、今回の協業につながりました。

――スタートアップであるソラリス社との協業は、従来リース・ファイナンス業務を中心としてきた当社にとって、大きな変革だったのではないでしょうか。
戸塚:2023~2025年度中期経営計画では「変革」をキーワードとしており、本取り組みは変革を推進する施策のひとつである「イノベーション投資ファンド」を利用しました。同ファンドは、投資を起点としたスタートアップ企業とのオープンイノベーションを通じて、新しいサービスや事業の開発を促進するために創設されたものです。同ファンド活用の意思決定や社内決裁のプロセスが機動的かつ柔軟に進められる体制に変化したことが大きな転換点となり、会社が変わってきたという手ごたえを強く感じました。こうした変化がなければ、今回のソラリス社との取り組みは実現できていなかったと思います。
小口径配管に特化したエアー駆動ロボットが、メンテナンスの現状を変える
――ソラリス社が開発したロボット「Sooha」は、どのような点が優れているのでしょうか。
戸塚:最大の特長は、他社にはない技術で小口径の配管に特化している点です。水道、ガス、工場、プラント、鉄道、ビル、マンションなど社会のあらゆる場所に配管は存在しますが、その中でも特に細くて入り組んだ配管の深部の点検・清掃は、既存の技術やサービスでは対応が難しい状態です。「Sooha」は、ミミズの動きを模して上下左右の体躯のくねりを最小限に抑え、“極細曲がり”が複数存在する配管内部を可視化しながら効率的に点検し、さらに清掃作業を同時に行うことができます。また、このロボットの動力が空気(エアー)であることも大きな優位性がある点です。電気式と比べて防爆性に優れ、石油や火薬など発火の恐れのあるものを扱う工場など、電気から発生する火花が大事故につながってしまう可能性のあるデリケートな環境でも安全に使用できるのです。
半導体CVD装置での活用例


販売はせずサブスクのみに特化。課題を抱えるお客さまの利便性を重視したサービスを構築
――安全性が求められる環境に特化することで、ニッチながらも深いニーズに応えているのですね。この協業モデルは、戸塚さんが経験された中でも特殊なものなのでしょうか。
戸塚:ソラリス社との協業は、ファイナンス機能を持つ当社ならではの強みを最大限に生かした、非常にユニークなモデルだと自負しています。このモデルは、ソラリス社が開発したロボットを単なるリースや販売などの「売り切り」のビジネスで終わらせず、社会的課題解決型の「サービス」として提供するための、最も効率的な方法だと考えています。現在、ソラリス社からの直販も一切しておらず、当社との協業モデルを通じたサブスクによる提供のみ行っております。
――なぜ、売り切り型の販売を避け、サブスクモデルにこだわったのでしょうか。
戸塚:お客さまが高価なロボットを購入するには慎重な判断が必要なため、導入まで時間がかかります。課題を抱えているお客さまに早くロボットをお届けするためにも、サブスク方式としました。初期費用が不要のため導入にあたってのハードルは下がりますし、月額サービス料の中に消耗品交換やロボットの保守、代替機の提供などが含まれているため、常に適切な状態でロボットを使用できることも、このサービスモデルでの提供にこだわった理由です。
――2社の具体的な役割分担を改めて教えてください。
戸塚:ソラリス社には、ロボットの開発・提供といった技術的な部分に注力していただいています。一方で当社が担うのは、ロボットの所有と管理です。それに加え、当社が長年培ってきたファイナンスサービスであるお客さまへの債権管理、サービス料の請求・回収業務、保険の付保、さらには固定資産税の納付といった煩雑な事務処理まですべて当社が引き受けています。これによりソラリス社は技術開発に集中でき、お客さまは小口径配管の点検という高度なソリューションを高額な初期費用なしで利用できる。この明確な役割分担こそが、当サービスを成立させている核となります。ソラリス社は、自社のビジネスモデルの中核を、当社との協業に託してくださっています。これは、当社が担う役割の重要性と、両社のパートナーシップが持つ大きな価値を示すものです。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
戸塚:当社はリースを祖業としながら、現在はアセット(資産)の価値を最大化する多様なビジネスを展開しています。さらに今後はスタートアップ企業をはじめとするさまざまなパートナーさまと協業し、事業の領域を広げ社会的課題を解決するソリューションの提供をめざします。今回のソラリス社との協業モデルはまさにその象徴で、本取り組みについては、今後は対応配管サイズを広げ、半導体以外の分野も含めた新たなお客さまへのビジネス拡大を図っていきます。事業規模としては、2028年に10億円、30年に28億円、32年に50億円の売上が目標です。社会のあらゆる所でみられる配管の老朽化等のトラブルは深刻で喫緊の社会的課題であるため、今まで対応できなかった配管点検・清掃を実現し、社会インフラを支えるソリューションを提供していきます。

- ※本記事は2025年12月の取材内容に基づいています。
記載の部署・数値・取り組み内容は取材当時のものです。



