事業領域を広げ、次世代デジタルインフラの確立へ
三菱HCキャピタルが挑む「GPUシェアリング×グリーンデータセンター」の実現に向けて
2026年08月21日
急成長するデジタル産業の成長をふまえて、三菱HCキャピタルでは、2026年4月に通信・AI等のデジタルインフラ分野に特化するデジタルインフラ営業部を新設しました。世界中で生成AIの活用や高度なシミュレーションが急速に浸透する今、その基盤となる「GPUサーバー」や「データセンター」の不足と価格高騰が、産業界のボトルネックとなっています。こうした社会的課題の解決に向け、次世代インフラ領域に挑戦する同部は、最先端テクノロジー分野のスタートアップ企業であるハイレゾ社・モルゲンロット社との資本業務提携を通じて、「循環型ビジネスモデル」と「グリーンデジタルインフラ」の構築をめざしています。
今回は、デジタルインフラ営業部事業開発課の羽村課長代理が、その挑戦の最前線について語ります。

羽村 翔太:インダストリー営業本部 デジタルインフラ営業部 事業開発課
2014年入社。エリア営業部で中小企業向けの法人営業を実施。2017年より現部署に異動、
通信キャリア向け営業を経験後、今期より事業開発課であらたなビジネス開発へ従事。
「ファイナンスだけではAIと生きる未来を支えられない」という危機感
――デジタルインフラ営業部の体制や役割について教えてください。
羽村:日本をはじめ世界各国で生成AIの活用が広がる中、その基盤となるGPUサーバーやデータセンターの需要がかつてないほど高まっています。一方で、半導体不足による調達コストの上昇や、データセンターの電力・スペース不足といった課題も顕在化しています。これまで当社はリースやファイナンスを通じてお客さまを支援してきましたが、こうした環境下では資金提供だけでは課題を解決できず、このままでは日本企業におけるAI活用の拡大が遅れてしまうのではないかという危機感を抱くようになりました。
こうした課題の解決に向けて、2026年4月にデジタルインフラ営業部が新設されました。現在は部課長を含め12名の体制で、「営業課」と私が所属する「事業開発課」で構成されています。生成AIの活用拡大やデータセンター需要の高まりを背景に、GPUサーバーやデータセンターをはじめとする次世代デジタルインフラ領域に挑戦しています。
その中で事業開発課は、新たな事業機会の創出を担う部署です。数年間の準備期間を経て、当社のイノベーション投資ファンド(※)を活用し、2025年11月にハイレゾ社、2026年5月にモルゲンロット社との提携を実現しました。現在は両社とのパートナーシップを軸に、社内外の知見や機能を横断的につなぎながら、新たな事業の創出に取り組んでいます。
- ※新サービスの創出や新事業開発を目的に、2023年4月に設立した総額100億円のスタートアップ向け投資枠。
外部パートナーとの連携――「適材適所の設計」と「効率的稼働」
――外部2社との連携による課題解決方法についてお聞かせください。
羽村:本領域への本格参入には、最新のテクノロジー技術に関する高い知見を持つパートナーが不可欠であり、先述の2社との提携は大きな意味を持っています。

ハイレゾ社は、GPUクラウドサービスやGPU専用データセンターの運営を通じて、生成AIに必要な計算環境を提供する企業です。
当社とハイレゾ社は、「地方分散型データセンターの構築」を中心に連携していきます。地方分散型データセンターとは、地方の複数拠点にデータセンターを設置・運営する考え方で、再生可能エネルギーとの連携や災害リスクの分散といった効果が期待されています。生成AIの活用や高度なシミュレーションの実行には、大量の計算処理を支えるデータセンターが不可欠です。ハイレゾ社は、このような需要に対応するデータセンターの設計・運用に関する豊富な知見を有しており、地方の既存施設を上手く再活用しながら、用途に応じた最適な設計を実現するノウハウを持っています。そのため、市場の需要と施設の制約に応じて、必要な性能を確保しながら、短期間かつ低コストで環境を構築できる点が特徴です。

一方、モルゲンロット社は、生成AIに必要な計算資源(GPU)の提供・管理サービスや、AIデータセンターの構築・運営を手掛ける企業です。GPUなどの計算資源の利用状況を把握し、運用を最適化する技術や、余剰となっている計算能力を有効活用するための仮想化技術を有しており、この分野で国際特許も取得しています。当社とモルゲンロット社は「GPUの可視化・シェアリング」に取り組んでいきます。GPUは高額なものでは1台1億円を超えるようなアセットであり、導入後の稼働率や活用方法が課題となる場合があります。そこで当社がGPUサーバーを保有・提供することによって、お客さまは多額の初期投資を行わなくとも、AI開発用の計算資源を必要な分だけ利用できるようになります。
――各社が連携することで生まれる相乗効果とは?
羽村:ハイレゾ社が有するGPUインフラの構築・運営ノウハウ、モルゲンロット社が有する計算資源の効率活用を実現する技術・サービス、そして三菱HCキャピタルのアセット保有・ファイナンス機能を融合することで、最先端の技術と安定的な供給体制を兼ね備えた統合ソリューションをお届けすることができます。
また、本提携を通じて、当社が中期経営計画に掲げる事業領域の拡張につながる可能性もあると考えています。将来的には、これまでのファイナンスやアセット提供に加え、AIデータセンター(AIDC)分野における新たな事業機会の創出についても検討していきたいです。具体的な事業化は今後の検討事項ですが、アセットのライフサイクル全体を見据えた活用モデルが実現できれば、お客さまに対してより柔軟で競争力のあるサービス提供につながることが期待されます。単にモノを提供するだけでなく、AI時代に求められる計算資源を最適な形で循環・活用していく仕組みの実現は、当社がめざす方向性の一つです。その実現に向けて、各社の知見や強みを生かしながら可能性を探っていきます。
「地方分散型データセンター×再エネ」が導くグリーンデジタルインフラ
――本事業における環境面での配慮はどのようにお考えですか。
羽村:すでに国内トップ企業には、「自社事業によって排出されたCO2量に対して責任を持つ」という思考が定着しており、今後はデジタルツールや計算資源利用に伴うCO2排出量についても、重要な経営課題となることが想定されます。さらに、デジタルインフラプレイヤー間では電力の獲得競争が激化しており、再生可能エネルギーの確保が競争力の源泉ともなり得るでしょう。
当社グループが有する再生可能エネルギーの開発・供給機能や不動産活用の知見と、各社が持つ技術やノウハウを組み合わせることで、新たな価値創出につながる可能性もあります。例えば、再生可能エネルギーと地方分散型データセンターを連動させた環境負荷の低いデジタルインフラの実現も将来的な構想の一つです。具体的な事業化は今後の検討事項ですが、持続可能な計算力基盤の実現に向けた選択肢として、中長期的な視点で検討をしていきたいと考えています。

未来への決意――物理からソフトウェアへ、ビジネスの進化と社内の熱気
――営業現場の反応や手応えはどうでしょうか。社内のモチベーションに変化はありますか。
羽村:以前は、当社のお客さま企業の財務・総務部門にAIインフラをご紹介しても、「それは何ですか?」という反応をいただくことが少なくありませんでした。しかしこの数年は、生成AIの活用が広がるなかで、先進的なAI開発に取り組む企業や、製造業や研究機関など、高度なシミュレーションやAI活用が求められる領域を中心に、関心が高まっています。また、ハイレゾ社およびモルゲンロット社との資本業務提携は、当社のAIインフラ分野への取り組み姿勢の高さを示すものとして、多くのお客さまから関心をお寄せいただいています。両社が有するGPUインフラ運営や計算資源活用に関する知見・技術力が、市場からの大きな信頼につながっています。
また社内の各部署からは、過去に例を見ないほど能動的で熱い反応があります。凄まじい速度で進化するAI関連の報道を通じて、変化の必要性を感じている社員が多く、営業現場からは「こんな悩みを抱える顧客がいる」「遊休地でデータセンターはできないか」といった相談が続々と寄せられています。社内の前向きな姿勢を日々肌で感じているところです。
――今後のロードマップと、めざす未来をお聞かせください。
羽村:まず短期的なゴールは、現中期経営計画期間中に、このデジタルインフラ事業を確固たる収益の柱として立ち上げることです。この市場は変化が激しく、スピードが命です。2026年度中にアセットを取得し、サービスの本格稼働をめざして強い決意で臨んでいます。
中長期的には、物理的な設備やアセットの提供にとどまらず、工場やロボットなど現実世界の設備とAIを連携させるサービス(フィジカルAI)や、企業専用の環境で安全に利用できる生成AIサービス(ローカルLLM)など、お客さまの生産性向上につながる新たなソリューションの提供をめざします。
その実現に向けて、技術的な知識やケイパビリティが不足する部分は、今後もスタートアップをはじめとする幅広いパートナーとの協業を進めながら、新たな価値の創出に取り組んでいきます。当社の金融機能やアセットマネジメントの知見と、パートナー企業の技術やサービスを組み合わせることで、日本のAI活用と持続可能な社会を支えるデジタルインフラの実現をめざしていきます。



