CFOメッセージ
このたび、当社のCFOに就任いたしました川上和義です。私はこれまで総合商社にて、主に財務経理分野で国内・海外でのキャリアを歩み、事業会社出向や共同事業参画も通じ、M&Aや再生支援を含めて幅広い業務を経験しました。直近では全社の事業ポートフォリオ入れ替え推進やそれを支える資本政策・財務戦略を企画し、具体策をリードしてきました。こうした経験を活かし、当社グループにおいても、将来の成長に向けた投資機会の実現や事業強化に努め、企業価値向上に尽力してまいります。
当社グループはこれまで、幅広く分散の効いた事業ポートフォリオと強固な顧客基盤をベースに、景気変動や市場環境の変化に左右されにくい安定的な成長を実現してきました。多様な事業領域を有することで、特定の市場環境や業界動向に依存しない収益構造を構築し、長期にわたり安定的な利益成長を継続してきたことは、当社グループの大きな強みであると考えています。
一方で、世界的なインフレや金利環境の変化、地政学リスクの高まり、さらにはデジタル技術やAIの進展による産業構造の変化など、企業を取り巻く経営環境はこれまで以上に不確実性を増しています。こうした環境下において、当社グループは、単に利益規模の拡大を追求するだけではなく、資本コストを上回るリターンを継続的に創出し、資本効率を高めていくことが、企業価値向上に向けて不可欠であると認識しています。
そのためには、既存事業の収益性向上に加え、事業ポートフォリオの継続的な見直しと、リスク・リターンを踏まえた最適なキャピタルアロケーションを実行し、成長投資と財務健全性、株主還元を高度なレベルでバランスさせていく必要があります。CFOとして、「31年度のありたい姿」の実現に向け、成長投資の強化を含むキャピタルアロケーションの最適化を推進し、持続的な利益成長と企業価値の最大化を実現していきます。
| 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | |
|---|---|---|---|
| 売上総利益 | 3,800 | 4,626 | 5,001 |
| 経常利益 | 1,516 | 1,935 | 2,360 |
| 親会社株主に帰属する 当期純利益 |
1,238 | 1,351 | 1,622 |
| 総資産 | 111,498 | 117,623 | 130,895 |
| 有利子負債 | 84,397 | 88,407 | 98,803 |
| ROE(%) | 7.7 | 7.8 | 8.6 |
| ROA(%) | 1.1 | 1.2 | 1.3 |
| 配当性向(%) | 42.9 | 42.5 | 40.7 |
2025中計の総括
2025中計では、「31年度のありたい姿」の実現に向け、「成長性」「資本収益性」「財務健全性」の3つの視点をバランスさせることを基本方針として、財務戦略を推進してきました。
成長性の面では、「ビジネスモデルの進化・積層化」を実現するため、CAI International の完全子会社化やEuropeanEnergyへの戦略的投資などのインオーガニック投資を進めるとともに、航空機や航空機エンジンといった高収益分野への大型投資を実施してきました。こうしたオーガニック・インオーガニックの両面で投資を進めることで、着実に将来に向けた種をまき、収益力を向上してきました。
資本収益性の面では、資本コストを意識した経営を実践してきました。収益性の低いアセットや、グループとのシナジーが低い事業については見直しを進める一方で、より高い収益性が期待できる分野への資産入れ替えを進めてきました。経営統合後の5年間で、平均ROA1.0%の資産を約0.6兆円売却し、同1.8%の資産に約0.8兆円新規投資することで、2025中計期間中はROA・ROEともに毎年改善するなど、収益性を着実に高めてきました。
財務健全性の面では、安定的な株主還元を継続しながら、事業に内包されるリスク管理やALM管理の高度化を含む適切なリスクマネジメントにより、信用格付A格を維持し、安定的かつ競争力のある水準で資金調達を行ってきました。
これらの結果、2025中計最終年度となる2025年度の純利益は目標としていた1,600億円を達成し、株主還元として27期連続増配を実現しました。また、PBRについても2025年9月に初めて1倍を超えました。しかし、言うまでもないことですが、PBR1倍はゴールではなく、あくまで通過点に過ぎません。今後も持続的な成長と資本効率の改善に向けた取り組みを着実に進めていきます。
一方で、ROE・ROAについては目標未達となりました。これは、一部事業を取り巻く環境が大きく変化したことや円安進行の影響に加え、高収益アセットへのポートフォリオの入れ替えが不十分であり円安を加味したベースでの利益が十分に伸びなかったことが要因であると考えています。
こうした課題認識を踏まえ、2028中計では、より踏み込んだ事業ポートフォリオの変革とキャピタルアロケーションの最適化を推進し、資本収益性を高めていく必要があると考えています。

2028中計の方針と財務戦略

2026年度からスタートした2028中計は、「31年度のありたい姿」の実現成否を左右する極めて重要な計画であると位置づけています。不確実性が高まる外部環境においても、持続的に企業価値を高めていくため、2025中計で認識した課題を踏まえ、2028中計では純利益だけでなくROEを最重要指標に据えた経営を行っていきます。
当社グループの株主資本コストは引き続き10%程度と認識しており、この株主資本コストを上回ることが必要最低限の水準であると考えています。そのため、2028中計におけるROE目標を10%とし、中長期的にめざす目線は12%程度に置いています。
これらの実現に向けて、既存事業から創出される利益や資産売却によって得られる資金を、成長投資と株主還元に振り向けるキャピタルアロケーションを最適化していきます。その際にも、「成長性」「資本収益性」「財務健全性」の「3つの視点のバランス」をとりながら運営するという2025中計の基本方針から変わりはありません。
2028中計では、ROE10%、ROA1.7%の達成と、外部格付A格維持を目標としています。それらの両立を可能とするレバレッジの水準として、自己資本比率のターゲットを17%としました。事業戦略に沿った成長投資を強化する一方で、余剰資本を抱えない規律あるバランスシート運営を実施し、資本効率を意識した経営をさらに深化させ、最適な資本構成を実現していきます。
キャピタルアロケーションの最適化
まず、資本コストを意識した事業ポートフォリオの見直しを通じて、既存事業の収益力向上と低収益分野からの撤退・資産圧縮を、これまで以上の規模感とスピード感をもって進めていきます。具体的には、事業単位でのリターンと資本コスト(WACC)の比較による見極めを厳格に行い、低収益な事業や資産の売却等を2.1兆円実行します。
これらによって創出された資金は、M&Aなどのインオーガニック投資に1.0兆円、収益性の高い既存事業の投資に1.3兆円の計2.3兆円に大胆に振り向け、総資産の拡大をゆるやかに抑えつつ、収益性向上と利益成長を両立させることで、持続的な企業価値の向上につなげていきます。
成長投資の中心となるのは、航空・不動産をはじめとする専門事業や、ビジネスモデルの進化・積層化によって高い付加価値を創出できる分野です。また、案件のパイプラインの拡充や定期的な見直しを強化し、優良案件への投資実現を加速させていきます。
さらに、人的資本やDX戦略への投資も積極的に推進します。事業環境が大きく変化するなか、競争優位性の源泉は人財とデジタル活用力にあると考えています。採用力や人財育成を強化し、データやAIを活用した経営の高度化・高速化を実現することで、生産性向上と競争力強化を図っていきます。
一連の取り組みにあたっては、地政学リスクの顕在化やマクロ経済・金融市場の急激な変動、事業ポートフォリオの変化にともなうリスクと必要資本・コストのバランスの変化などにも対応したリスクマネジメントの見直しも行います。また、リスクに備えたレジリエントな財務オペレーション基盤と安定的かつ競争力のある十分な資金調達ソースも確保し、事業戦略の実行をしっかりと支えることで、ROA向上とROE10%達成を確実なものとしていきます。
株主還元については、引き続き配当を基本とします。「3つの視点のバランス」を維持しつつ企業価値を向上させ、持続的な利益成長を通じた安定配当を重視する方針です。その上で、市場からの期待も踏まえ、配当性向の目標を従来の40%以上から45%以上へ引き上げました。今後も、成長投資とのバランスを図りながら、安定的かつ継続的な株主還元を実施していきます。
企業価値の最大化に向けて
価値創造に向けた取り組みが、財務面での成果として結実しているか、また、株主資本コストを上回るリターンを生み出せる収益構造となっているか、CFOとして、常に短期と中長期の両方の時間軸を意識しながら検証し、状況変化に応じて必要な施策を迅速に実行していきます。
最重要指標であるROEの目標を達成し、その水準を将来に向け持続的に高め、PBR向上につなげていくことが企業価値向上の核心であると考えています。加えて、2028中計では非財務面での戦略や目標をより明確化して打ち出しており、財務面・非財務面の目標達成に向けた取り組みを両輪として、中長期的な価値創造につなげていきたいと考えています。
2026年度の純利益は1,600億円と、前年度の1,622億円から減益を予想していますが、これは前年度にあった子会社の決算期変更による一時的な増益効果(228億円)が剥落する影響が主因です。この一時的な影響を除くと、実質的には前期比200億円以上の増益を見込む計画であり、2028中計期間の純利益目標も実質的には700億円以上の増益を狙うかなり意欲的な目標としています。
この達成に向け、インカムゲインとアセット関連損益の両面から安定した利益を創出する重要な基盤は、当社グループの分散された事業ポートフォリオです。2028中計では、より利益率の高い事業へのシフトを加速し、この強固な収益基盤である事業ポートフォリオをさらに進化させることで、持続的な成長と企業価値最大化を実現していきます。
今後も、投資家・株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとの対話を重視し、当社グループの成長ストーリーについて、より分かりやすく丁寧に発信していきます。CFOとして、資本市場との信頼関係をさらに深めながら、企業価値の最大化に全力で取り組んでいきます。

| 1年 | 5年 | 10年 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 累積 | 年率 | 累積 | 年率 | ||
| 三菱HCキャピタル | +43.6% | +137.3% | +18.9% | +242.1% | +13.1% |
| TOPIX | +34.6% | +102.2% | +15.1% | +228.2% | +12.6% |
- ※2株主総利回り(Total Shareholder Return:TSR):株価上昇によるリターンと配当金を合わせた総合投資収益率
- ※3TSRの計算は、三菱HCキャピタルは累積配当額と株価変動により、TOPIXは配当込みの株価指数により算出(Bloombergデータ等により当社作成)
- ※4グラフの値は、2016年3月末日の終値データを100としてTSRによる時価を指数化したもの(保有期間は2026年3月末まで)
- ※52016年3月~2021年3月は三菱UFJリースの実績を記載