環境Environment
TCFD提言に基づく情報開示
当社グループは、持続可能で豊かな未来社会の実現に向けて、世界各地のお客さま、パートナー企業とともに、社会的課題の解決に取り組んでいます。
気候変動については、地球環境や人々の生活、企業活動に重大な影響を及ぼす深刻 な社会的課題と捉えており、環境に関わるマテリアリティとして「脱炭素社会の推進」「サーキュラーエコノミーの実現」 を掲げています。
また、2021年11月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、当社グループにお ける温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みの強化を進めています。また、事業活動を通じてお客さまの脱炭素化 に貢献することで、脱炭素社会の実現に取り組んでいます。
① ガバナンス
持続可能で豊かな未来社会の実現に貢献する存在となるべく、当社グループでは「サステナビリティ委員会」を設置しています。本委員会は経営会議の諮問委員会の一つに位置付けられ、気候変動問題をはじめとするサステナビリティに関連する重要課題について審議することを目的に開催し、その結果は、経営会議ならびに取締役会にて報告されます。同年12月に公表した「脱炭素社会の推進」を含むマテリアリティについても、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会での議論を経て特定したものです。当社グループは気候変動にともなう事業への影響を把握・管理する取り組みを進め、ガバナンスを強化していきます。
取締役会の監督および経営陣の役割
当社グループ サステナビリティ推進体制図
サステナビリティ推進体制における組織体と役割
組織体 | 役割 |
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取締役会 | 取締役会は経営会議で審議・決議された内容の報告を受けて、当社グループのマテリアリティ、環境課題への対応方針および実行計画、進捗状況などを含む全社的な経営に係る施策について監督を行うとともに、当社戦略などの重要事項決定時には当該内容を反映しています。 |
経営会議 | 当社グループのマテリアリティ、環境課題への対応方針および実行計画、進捗状況などを含む全社的な経営に係る施策について具体的に審議・決議します。重要事項は取締役会に報告されます。 |
リスク管理委員会 | リスクマネジメント本部長を委員長とし、リスク管理委員会の委員は、社長、副社長、経営企画本部長、財務・経理本部長、審査本部長、IT・事務本部長、監査担当役員で構成されます。 経営全般に係るリスクを総合的かつ体系的に管理しています。気候変動リスク、人権リスクなどによるその他の主要リスクへの総合的な影響について、経営会議に報告しています。 原則として四半期に1回の開催。 |
サステナビリティ委員会 | 経営企画本部長を委員長とし、サステナビリティ委員会の委員は、社長、副社長、財務・経理本部長、人事・総務本部長、リスクマネジメント本部長、審査本部長、IT・事務本部長で構成されます。当社グループのマテリアリティ、環境課題を含むサステナビリティ推進に関する長期計画と非財務KPIの目標および計画の策定や各事業本部の進捗状況のモニタリングなどを実施し、重要事項は経営会議に報告されます。 原則として年2回の開催。 |
サステナビリティ委員会事務局 (経営企画本部(企画部)) |
当社グループのサステナビリティの基本方針に基づく全社戦略の企画立案・推進を担います。当社グループのサステナビリティ領域における国内外の知見を収集し、方針・戦略とともにサステナビリティ委員会などに報告します。 |
② リスク管理
脱炭素社会への移行にともなう規制変更や技術革新、ビジネスモデルの転換、または地球温暖化にともなう異常気象などは、業績悪化などによる取引先の経営破綻、当社グループが保有するアセットの価値下落など、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、気候変動リスクを全社的なリスク管理における重要なリスクの1つとして認識しており、リスクを特定・評価・管理するとともに、ビジネスの機会と捉え、脱炭素社会の実現に貢献します。
a.リスクマネジメント態勢の概要
当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事業などのリスクを「統合リスク管理」の枠組みで総合的に管理しています。
統合リスク管理の枠組みで管理している重要なリスクには、信用リスク、アセットリスク、投資リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクなどがあります。
考えられるリスク要因を管理対象に、各リスクの所管部門が外部環境の変化などによる課題を把握し、定期的にこれらのリスクへの対策を検討のうえ、リスク管理委員会をはじめとした各委員会にて報告・審議しています。また、重要事項は経営会議・取締役会にて報告・審議する管理態勢としています。
b.気候変動リスクの分類、影響事例
気候変動リスクには、気候関連の規制強化・技術革新などにともなう移行リスク、異常気象や気候の変化にともなう物理的リスクがあります。TCFD提言ではそれぞれを政策と法・テクノロジー・市場・評判、急性的・慢性的のサブカテゴリーに分類し、影響事例を示しています。
当社では、気候変動リスクは、信用リスクやアセットリスク、投資リスクなどといった既存のリスクを含む幅広い波及経路を通して、短・中・長期とさまざまな時間軸のなかで影響が発現するものと捉えています。また、当社の事業活動に対する直接的な影響に加えて、当社の顧客を通した間接的な影響の発現も想定されます。
こうしたリスク特性とTCFD提言の内容を踏まえたうえで、当社のリスク管理の枠組みも考慮し、気候変動リスクの影響事例を当社の主要なリスクごとに整理しています。統合リスク管理態勢のもと、気候変動リスクもその他の主要リスクとの関係性を踏まえて、リスクを特定・評価、管理する体制の構築を進めています。
今後、リスク分類や影響事例は、外部環境の変化、気候変動リスクに対する分析・評価の深化に応じて、その見直しを行っていきます。
気候変動リスクの分類、影響事例
主要リスク | 時間軸※1 | 移行リスク | 物理的リスク |
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信用リスク | 短~長期 |
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アセットリスク | 短~長期 |
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投資リスク | 短~長期 |
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市場リスク | 短~長期 |
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流動性リスク | 短~長期 |
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オペレーショナルリスク | 短~長期 |
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レピュテーショナルリスク | 短~長期 |
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戦略リスク | 中長期 |
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- 短期:2025年まで、中期:2030年まで、長期:2050年まで
(参考)TCFD提言によるリスク分類、影響事例
移行リスク:低炭素経済への移行に関するリスク
種類 | 気候変動が及ぼす環境変化 | 顧客/当社への影響等 |
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政策と法 |
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テクノロジー |
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市場 |
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評判 |
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物理的リスク:気候変動による「物理的」変化に関するリスク
種類 | 気候変動が及ぼす環境変化 | 顧客/当社への影響等 |
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急性的 |
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慢性的 |
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c.全体的なリスクマネジメントへの統合状況
気候変動リスクによるその他の主要なリスクへの総合的な影響は、リスク管理委員会にて報告・審議する態勢としています。シナリオ分析を通して判明したリスクも含めて、モニタリング体制を構築するなど、リスク管理全体への反映を進めていきます。また、気候変動に関する目標・計画策定、モニタリング内容は、サステナビリティ委員会にて報告・審議する態勢としています。両委員会の審議内容は取締役会の監督体制のもと、当社の経営戦略全体に反映し、リスクマネジメント全体、個別リスク双方の観点から適切に対応できる態勢としています。
③ 戦略
当社は、将来の気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を把握し、適切な情報開示、今後の施策の検討を目的に、「移行リスク」および「物理的リスク」に関するシナリオ分析を行っています。
なお、シナリオ分析は、現時点で得られる限定的な情報やデータを基に分析したものです。今回得られた分析結果を慎重に解釈し、ステークホルダーとの対話を通じて、今後はより多くの情報と関連データを入手し、分析手法の改良や分析対象事業の拡大を図ることで、適切な開示に反映させることに努めていきます。
a.シナリオ分析の概要
移行リスク分析の概要
対象セクターおよび 主要セグメント |
対象セクター | 主要セグメント |
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エネルギー(石油、ガス、石炭、電力会社) | 環境エネルギー | |
運輸(航空貨物輸送、航空旅客輸送) | 航空 | |
素材、建築物(不動産管理、開発) | 不動産 | |
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セクターおよび セグメント選定方法 |
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シナリオ |
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分析方法 |
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物理的リスク分析の概要
分析対象 |
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シナリオ |
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分析方法 |
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b.シナリオ分析結果
シナリオ分析実施対象セグメントである、環境エネルギー、航空、不動産、カスタマーソリューションを所管する各本部および全社のリスク管理所管部署であるリスクマネジメント統括部と気候変動が及ぼす当社の事業影響に関する議論を行い、シナリオ分析結果と既存戦略方針との整合性を確認しました。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会について、短期ないし長期にわたる対応策を講じることにより、リスクの最小化および機会の最大化を図っています。移行リスク分析の結果としては、再生可能エネルギーの拡大(環境エネルギー)、高燃費航空機・エンジンならびにSAFや水素などの低炭素燃料への移行(航空)、低炭素建物の需要拡大(不動産)などに関連するリスクと機会に適切に対処する必要性が認識されています。また、物理的リスク分析の結果としては、発電所の被災、太陽光パネルなど発電設備の劣化(環境エネルギー)、自然災害の激甚化による不動産価値の毀損、建築費用・運営費用・改修費用の増加(不動産)、当社グループ事業所の被災や運営費用・保険費用の増加などのリスクが想定されています。
気候変動リスクに対しては、適切な対応策を策定する一方、気候変動による機会については、事業機会の獲得を戦略に織り込んでいます。今後、気候変動関連のKPIを中期経営計画の実行の過程で反映し、国内外における関連動向および当社グループの取り組み状況を定期的にモニタリングする体制を整備していきます。
シナリオ分析結果
リスク・機会の分類 | 期間※1 | 気候変動関連リスクと機会の内容 | リスクへの対応策/機会実現の対応策 | ||
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リスク | 移行リスク | 政策と法 | 短期~長期 |
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テクノロジー | 短期~長期 |
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市場 | 短期~長期 |
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評判 | 短期~長期 |
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物理的リスク | 短期~長期 |
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機会 | 製品とサービス | 短期~長期 |
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市場 | 短期~長期 |
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長期 |
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- 短期:2025年まで、中期:2030年まで、長期:2050年まで
④ 指標および目標
脱炭素社会の実現に向けた取り組みは喫緊の課題との認識から、当社グループの温室効果ガス削減目標をパリ協定に準じて設定し、脱炭素社会への移行を「機会」と捉え積極的に推進していきます。
なお、将来的に新規事業の取り組みなどにより温室効果ガス排出量が大幅に増加した場合、あるいは、サプライチェーンを含めたグループ全体の温室効果ガス排出量算定を高度化するなかで数値の変動が生じる場合などにおいては、適宜目標設定を見直す可能性はありますが、いずれも今回設定する目標と同様に、パリ協定の水準に沿うよう設定する予定です。
a.当社グループの温室効果ガス排出量削減目標
短期 (毎年) |
中期 (~2030年度) |
長期 (~2050年度) |
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GHG排出量 (Scope1, 2) |
− | 2019年度比 △55% |
ネットゼロ |
エネルギー 使用量(国内) |
前年度比 △1% |
− | − |
b.今後の取り組み
当社グループにおいて温室効果ガス多排出取引と考えられる建物リース取引、航空機リース取引(カテゴリー13(リース資産(下流)))、不動産投資取引(カテゴリー15(投資))の一部の取引について温室効果ガス排出量の算定を行い、第三者保証を取得しています。
今後、温室効果ガス排出量算定取引の拡大や温室効果ガス多排出セクターに対する取り組み方針、および移行計画の策定などを通じて、サプライチェーンを含めたグループ全体の温室効果ガス排出量削減を推進していきます。